入学してまもなく、俺達はバスケのサークルに入った。
同じサークルの吉村先輩が佳織のことをやたらと気に入ってしまって、
俺は何かされないかいつも心配していた。
小柄で、どっちかっていうとギャル男っていうかチャラチャラしてるっていうか、
そういうタイプの男だ。
「佳織ちゃん、今日合コンやんだけどさ、人数足りないんだよね〜♪」
とかいって、たびたび佳織を遊びに連れて行こうとする。
先輩にはキツく言えないのか、佳織はいつも困っていた。
「おい、佳織!バイト遅れるから先いくぞ!」
「あ、まってよ賢ちゃん・・・・先輩、ごめんなさい〜」
いつもこんなことをいって適当にごまかして、先輩をかわしていた。
そんなある日、とんでもない出来事が俺達、というか佳織を襲った。
課題のことで先生と話をしていた俺に佳織は
『先に行ってるからね!』と言って、バスケの練習に行ってしまったのだ。
俺はそのあといつものように部室に行ったのだが、佳織の姿は見当たらない。
他の奴に聞いてみても、『さぁ?わかんない、ごめん・・』と返ってくる。
コートに行ってみたが、サークルの奴は何人か居たものの、
そこにもやはり佳織の姿はなかった。
それで、いつもボールを片付けてる薄暗い倉庫に行ってみた。
いつもは外側から鍵がかかっているんだが、なぜか鍵が開いている。
誰かが先にボールをもって行ったときに掛け忘れたんだろう、と思っていた。
しかし、ドアは開かない。内側から鍵がかかっているのか・・・?
そう思って、俺は裏側の窓にまわった。
やや小さいが、無理したら中に入れないこともない。
中がむさるのでいつも少しだけ開いている窓に耳を当てる。
かすかだが、倉庫の中から聞き慣れた声がする。
『中に佳織が居る』直感で俺はそう思った。
他に誰が居るのか、何のためにこんなところに居るのかも全然わからなかったが、
俺はとりあえず佳織のことが気になった。
窓を全て開き、静かに中に入った。
薄暗い倉庫の奥から、佳織の声と、男の声が聞える。
・・・・あの声は、多分吉村先輩だ。
俺はいきなり不安になった。『まさか』・・・・そこから先を考えたくなかった。
一歩ずつ足を進めると、佳織の声が徐々に鮮明に聞えてくる。
「せ、せんぱいっ・・・やめてくださいっ!!
痛い、痛いっっ!・・・・・いやぁっ・・・」
はっきりそう聞えた。俺は一目散に走った。
目の前に広がった光景を俺は信じたくなかった。
佳織は無理矢理ジャージを脱がされ、タンクトップとブラをまくりあげられて、
片方の乳首をしゃぶられ、もう片方の乳房を強く揉まれていた。
もう片方の手は、・・・・パンティの中だ。
「おい!やめろよ!!!」と、俺はおもわず叫んだ。
「け、賢ちゃん・・・・・」ひどく涙で汚れた顔で俺を見る。
「何・・・やってるんスか・・・?吉村さん・・・」
「え、何っておまえ、いつまで誘ってもダメっていうからガマンできなくなってさぁ。
お前はいいよなあこんな女と毎晩ヤれるんだk」
聞き切る前に、俺は小柄な吉村さんの胸倉をつかみ、
そのまま持ち上げたあと、地面に叩きつけた。
そして、頭をギリギリかすれて、地面をおもいっきり踏みつけた。
「2度とこんなことしてみろ・・・・今度は・・・はずさないからな・・・・」
震えが止まらなかった。殺してしまいたかった。
しかし、今そんなことしても、佳織には余計辛い思いをさせるだけだと思った。
自分を制御できるうちにここを出よう、と思った。
とりあえず何かされるとまずいので、腹におもいっきり蹴りを入れて、
吉村さんがうずくまっているうちに佳織に近づいた。
「ごめん、気付かなくて・・・・」
そういって佳織を強く抱きしめたあと額にキスをして、乱れた服を直した。
「あ・・・ありがとぅ・・・・・・」
まだ泣き止んでいない佳織の手を引いて、外に出た。
佳織はタオルで顔を隠していた。
「俺、部室に鞄とりにいってくるわ。
佳織のも持ってきてやるから、ここで待ってな?」
『こくり』と頷く。俺は急いで部室に鞄を取りに行き、佳織のもとへ戻った。
「待たせたな。・・・アパートかえっぞ。」
「うん・・・」
少し落ち着いたのか、もう泣いている様子は無い。・・が、目は真っ赤だ。
「あ、ちょっと待って。」
「ん?どうした?」
「吉村さん・・・・に、・・・・ね。」
そういって佳織は倉庫の中の吉村さんのところに行った。
そして、まだ腹を抱えて痛がっている吉村さんに声をかける。
「先輩!」かなり怒っているかんじだった。まぁ、無理はない。
「ゲホッゲホッ・・・・か、佳織ちゃん。ご・・・ごめ・・・・・」
半笑いで、たいして反省してもいないようすで佳織に言う。
「土下座してください。生半可な謝罪なんていらないんです!!」
昔からかなり気が強い佳織、近所のヤンキーが夜中にバイク乗り回してると
すぐ文句言いに行ったり、生徒に手を出そうとしていた先生のことを校長に話しにいったり、
不登校になった女子の事を十数人のいじめっ子に1人で問い詰めて謝罪にいかせたり・・・
とにかく、すこしぐらいのことでへこたれるやつじゃない。
いまはもう『良い主婦』ってかんじだが、佳織のおばさんも
昔は結構すごかったらしいからな。
娘にもそういう血が流れているのだろうか・・・。
『さすが・・・』と思ってみていると、先輩はすんなり土下座した。
「ほ、ほんと・・・もうゴメン、もうしないから・・・」
反省の色なんてどこにも見えないが、とりあえず吉村さんは土下座をした。
「・・・頭あげてください、先輩」少し穏やかな声で佳織は言った。
許してもらえたと思ったのか、吉村さんは頭をあげる。
すると、佳織は思いっきり左手をふりかぶって、吉村さんの右頬にビンタを張った。
「ざけんな!!!『もうしないから?』・・・馬鹿じゃないんですか?
そんな言葉信じられませんよ。変態!」
そういって、佳織は吉村さんの髪を鷲掴みにし、顔面におもいっきりパンチを入れた。
バスケで鍛え上げられた体が繰り出すパンチは、俺でも耐えられない痛さだ。
それに、いまのは思いっきり入っただろう・・、
「うわ〜・・・」と俺はおもわず目をそむけた。
鼻血を出してのぼせる先輩、佳織は鼻で笑って外に出た。
こいつとは絶対に喧嘩しないほうがいい、と俺は今まで以上に強く思った。
まだ涙で濡れていた顔を洗ってだいぶ落ち着いた様子の佳織を連れて、俺はアパートに帰った。
俺の部屋にふたりで入った・・・が、なんて声をかければいいのかわからない。
すると、『ぎゅっ』と俺に抱きつき、涙声になりながら
「こ、怖かったよぉ・・・・・」と言う。
なんか吉本にこんなネタあったな・・・と一瞬思ったが、
俺は佳織を強く抱き締めた。
とりあえずシャワーを浴びたいといっていたので、
風呂に湯をためて、佳織は風呂に入った。
風呂からあがってきた佳織に俺は言った。
「ごめんな、行くのが遅くなって・・・・」
「賢ちゃんが悪いんじゃないよ・・・」
俺は佳織の頭を撫でて、ふたりでベットに腰掛けた。
一旦立ち上がり、佳織が大好きなミルクティーをもってベットに戻る。
「まぁ、飲めよ」と、俺。
「ありがと・・・」といって、ミルクティーを飲み始める。
そして、今日のことをぽつりぽつりと話し始めた。
どうやら、『ちょっと肩痛めちゃってさぁ、テーピングしてくれない?』と、
テーピングの講習に何度か通って一通り覚えている佳織に頼んだらしい。
そして鍵を閉められ、中で無理矢理犯されかけた。
抵抗しようとおもったが、
『賢がサークル続けられなくなってもいいのか・・・?』
という一言に、押さえ込まれたらしい。
「そんなの、全然かまわねぇのに・・・・・」
「でもっ・・・・・・」
「あのなぁ・・佳織、俺がサークルでバスケできなくなることと、
お前が傷つくこと、どっちが嫌か、わかってくれるだろ?」
「・・・。」
「俺は・・・その・・、お前が幸せで居てくれることが、
俺にとっての幸せなんだよ。だからさ・・・・」
何を言っているのか自分でもよくわからなかったが、
佳織が俺に『ギュっ』と抱きついてきた。
「賢ちゃん・・・・賢ちゃん・・・・・・・」
ただそういって、佳織はまた泣いた。
そして、黙ってジャージを脱ぎ始めた・・・
バスケをやるつもりだったからか、シンプルな下着だ。
「おい・・・佳織?」
鎖骨の下あたりに、赤い跡が残っている。
「け、賢ちゃんが・・・消してっ・・・」
切なそうな顔で、俺をじっと見つめる。
俺は何かが切れたように佳織を押し倒し、佳織の体をむさぼるように愛した。
ブラを外し、胸全体を丹念に舐めあげ、そして乳首を吸う。
「ぁんっ・・・はぁ・・・・・・んぅ・・・・・」
片方の手で乳房を揉みながら、乳首を優しく噛み、舌で先を転がすと
「あぁぁああっ・・・・」と、高い声をあげる。
頭の中にある吉村さんへのイラつきとか、
早く行ってやれなかった自分へのイラつきとか、全て佳織への行為にぶつけた。
佳織を裸にして、自然と俺の顔は下に降りて行く。
そして、マンコにたどり着いた・・。
「賢ちゃんっ・・・恥ずかしいよ・・・・・」
その言葉も無視して、パンティのうえから舌で割れ目をなぞる。
「あぁあん・・・ゃん・・・・・」
そうとう恥ずかしいのか、顔を手で隠してしまった。
しかし俺は、行為を続ける。
パンティを脱がし、そこ全体をべろ〜っと舐める。
そしてクリトリスを舌で転がし、弄ぶ。
「ふぅん・・・・ぁ・・・やぁっ・・・・・」
腰がビクンと反応する。
そのまま舌の位置を下げていき、膣のまわりの愛液をぺろぺろとなめまわす。
ピチャ・・ピチャッ・・といやらしい音が部屋に響いた。
そして、あふれ出る愛液を、ズチュッ・・ジュバッ・・・と音を立てて吸った。
「はぁぁっ・・賢ちゃん・・・んぁああああ・・」
佳織の喘ぎ声は一層大きくなる。
俺は、ただそのピンクの割れ目を狂ったように舐めた。
「ねぇ・・・・挿れて・・・・・」と、佳織は言う。
断る理由などない。さっさとコンドームをつけ、ずずっと挿入する。
激しくピストン運動をくりかえしているうち、佳織の声はあがっていく。
俺は佳織を抱き起こして座位の姿勢に持っていき、腰を振った。
「あぁあああ・・・ゃぁ・・・・いいっ、、あん・・・あああああぁぁぁぁっっ!!!!」
佳織は激しくうしろにのけぞって、そのあとすぐグッタリしてしまった。
「・・・イったのか・・・・?」
「ん・・・うん・・・・た、多分」
「そっか。」
深いキスをして、また俺は腰を振りはじめる。
そして、俺は佳織を強く抱き締めながらイった。
こんなに佳織のことを考えないで、怒りを性欲に変えて佳織にぶつけたセックスは、
後にも先にもこれ一回きりだ。
・・・時間はもう深夜をまわっていて、
佳織は風呂に入るから、と俺の部屋から出た。
佳織のハブラシとかも置いてあるんだから、
ここの風呂に入ってそのまま寝ればいいのに、というと
「女の子はいろいろ必要なんだよ!」とか言っていた気がする。
多分あれだ、俺の風呂場には佳織のシャンプーとかは切らしちゃってて、
シーブリーズのもんしかないから拒んだんだな(笑)。
佳織が部屋に入るのを見送って、俺も風呂に入った。
そしてすぐ寝てしまったんだが・・・・
朝、携帯を見ると佳織から10件ほど着信が入っていた。
マナーモードにしていたから、全然気付かなかった。
何かあったのか?と思い、すぐに電話をかけた。
「おい、どうした?」
「ん・・あのね、昨日、風呂入った後窓開けて夜風に当たってたらね・・・
外に先輩が居てさ・・・にやにやしながらずっとこっち見てるの・・・・。
そのあとチャイム鳴って・・・・ずっと無視してたんだけど・・・・・・。」
「・・・まじかよ」
「う・・うん。」
こんなことがある日が、2週間ほど続いた。
吉村さんは学校を探しても居なかったので、どうにもしようがなかった。
頭がイカレてんのか?と思ったが、
とりあえず先輩をなんとかするより、佳織が安心して生活できるように
するべきだと思った。
佳織と電話を切った後、俺は少し考えた後に佳織の自宅に電話をかけた。
「はい、●●でございます」
「あの、●●賢ですが、・・おばさんですか?」
「あら賢ちゃん、お久しぶりね。どうかしたの?」
「はい、あの・・実は・・・」
さすがに倉庫で襲われたことまでは言わなかったが、
危ない先輩が居て、佳織はそうとう苦しんでいるということを伝えた。
「あら・・・そうだったの」
「はい、それで・・夜もあまり眠れないみたいだし、
俺も心配なので、ちょっと落ち着くまで佳織の部屋を空けて、
2人で一緒に住みたいんですけど・・・だめでしょうか?」
「あらあら、そんな・・・賢ちゃんはいいの?」
「もちろんです、俺もそのほうが安心ですから。
それに、おばさんに似て料理も美味いし、助かるんです(笑)」
「賢ちゃん嬉しいこといってくれるじゃない!
・・じゃあ、迷惑かけちゃうけど、あの子の事お願いね。」
「はい、では・・・」
そのあと、うちの親には適当に説明して、俺達は一緒に住む事になった。
さすがに2人分の荷物全部は俺の部屋には置けないので、
佳織の部屋は、荷物を置いたり、バイト先や友達と遊ぶための部屋にして、
俺の部屋で暮らすことになった。
さっそく次の日、俺達は『ひっこし』をして、
筋トレのために置いてあった器具や、大量の本を佳織の部屋に運ぶ。
そして・・・いつのまにかバレンタインデー。朝から俺は無理矢理部屋から追い出された。
「7時ジャストに帰ってきてよ!!」
「了解〜」
あまり金を使いたくなかったので、俺は本屋に行って立ち読みしたあと、映画を見て、
残りの時間は佳織の部屋の掃除に当てた。
最近いろんなやつが遊びに来るので、ちらかっていたからだ。
携帯のアラームが18時55分を知らせる。
俺は掃除の道具を片付け、ちょうど7時に家についた。
「ただいまー」
「おかえり〜♪」
なんだか嬉しそうだ。
部屋のキッチンからは、いい匂いが漂ってくる・・・・。
綺麗にセットされたテーブル、そこにならぶ豪華なディナー。
キッチンにいって、あまっていたおかずに手をつけようとしたら、
佳織が俺の手をピシっと叩いた。
「先に、手洗いとうがいしなきゃだめでしょ!!!」
『ごめんなさい、お母さん』と冗談でいいながら、俺は手を洗って席に着く。
「今日はねぇ〜、きのこのパルメザンチーズ揚げ、シチュー、
鯖のマスタードソース焼き・・・・・・」といいながら、
一流レストランで出てきそうな料理を指差す。
「っはーーー、ほんとおまえすごいな!」と、毎度の事ながら思わず感心する。
佳織に頼りっぱなしな俺、未だに味噌汁とカレーぐらいしかまともに作れない。
それに比べて、佳織は市販でいろいろ楽に作れる『○○の素』も使わずに料理するんだから・・。
おばさん、いい娘さんに育ててくださってありがおうございます、と
心の中で激しく感謝した(笑)。
そして他愛もない話をしながら、美味しい料理を頂く。
「む、お前・・・腕あげたなあ」
「ふふっ、そりゃ毎日やってたらねぇ・・・」
「す、すいません・・俺も料理できるようになります」
「そういうことじゃないって(笑)」
『ごちそうさまでしたー』
2人そろって完食したあとは、2人で片づけをしてまったり。
しばらくすると、佳織はサっと立ち上がって、冷蔵庫の中から何か取り出して、
俺のところに戻ってきた。
「はいっ、これ・・・・」
手渡されるものっていったらひとつしかない。
四角くカットされてココアパウダーがまぶった、あの美味しい生チョコだ。
さっそくひとつ口に運ぶ。
「あぁ・・・懐かしい味だな」
「でしょ〜」
「お前、店出せるんじゃねえか?」
「いや〜無理だよ、これ結構お金かかるんだから・・・」
「え?板チョコ溶かすだけじゃねえの?」
「クーベルチュールっていう高いチョコつかってるから(笑)」
「へ〜」
「普通の板チョコぐらいの大きさで、500円ぐらいするんだよ〜」
「そ、そうだったのか!!」
「そうそう。脂肪分が28℃ぐらいで溶けるから、
口の中ですぐなくなっちゃう感じするでしょ?」
「おぉ、そういわれれば」
本気で、主婦業で終らせるのはもったいないなと思いつつ・・・
俺はその1年1回の味を堪能していた。
「あ、もうひとつ・・・・」
といってまた佳織は冷蔵庫に何かを取りに行った。
「へへっ、今日は・・・特別だからね」
今度は、生クリームやミントで綺麗に飾られたショコラだ。
どこの店で食うケーキよりも・・・、というか、世界一美味しかった。
「なんかアレだなぁ、バレンタインは結構いろんなことあったよなあ」
「そうだね〜!」
「中2の頃は・・・泣きながら食ってたんだよなあ、チョコ」
「へぇ、そうなんだ」
「んで中3のときはもらえなくて凹んで・・・・」
「賢ちゃんがフったからでしょ。」
「うぅ・・・そうなんだが」
「高1も高2も、義理っていうかー、買ったやつだっただろ?」
「あ〜あれね、だって、迷惑かな〜って思ったんだよ」
「うむ・・・・」
「で、3年の受験勉強真っ只中に・・・」
「あはは、そうだったね〜」
こんな話をしていたと思う。
俺達は、バレンタインになるといつもこのことを思い出しては、話す。
そして佳織から貰うものは、決まってあのチョコだ。
・・・今は子供が手伝うので、綺麗な四角ではないが。
「おまえなあ、もうちょっと綺麗に切れよ!」
「だって包丁こわいんだもん!!」
「はぁ〜っ!?こわいっておまえ、おかーさんのほうが
よっぽどこわいだろうが・・・・あだっ!!!」
バスケットボールを俺に投げつけたのは、娘ではなく佳織だった。
「お父さん!」
「す、すいません・・・」
「わ〜、パパ怒られてる〜」
「お前らは黙ってろ!!」
『お前ら』っていうのは、俺達は2つの命を授かったからだ。
2卵生双生児で、男と女が1人ずつ。
娘のほうは佳織によく似て生意気で強く、顔も昔の佳織にそっくりだ。
息子は俺によく似ている、と、佳織は言う。
まあ、多分、娘は佳織に似て料理が好きだし、良い嫁さんになってくれることだろう。
子供2人ともバスケが大好きで、休日といえば俺達4人でバスケをしに出かけた。
・・・少し話しが飛んだが、結婚式をあげたのはバレンタインデーで、
そして子供が生まれたのはなんと翌年のバレンタインデー・・・
俺達はよっぽど縁がある日なのかもしれない。
結婚してすぐ、『まだたまに吉村さんを見かけるのでキモチワルイ』と佳織は言うし、
それにいつまでも同棲してるのに2部屋あるのもおかしいだろう、ということで
俺達は地元に戻って、佳織のおじいさんの代からある、
使っていない荒地を頂いて、一軒家を建てたのだ。
金銭的にまだまだ厳しい部分もあるが、俺と佳織は同じ会社に就職し、
一生懸命働いている。
ある日の兄妹喧嘩・・・
「お母さん!!こんな奴よりもっと優しい妹が欲しい!!」
「お母さん!!こんな奴よりもっと強い弟がほしいよ!!」
俺達は、腹をかかえて笑った。
こいつらも今度から小学生、そろそろ・・3人目か?なんて、思ったりする。